ぼくは臨床医をしながら嘱託産業医を15事業所で行っています。
昨年末の新型コロナウイルス感染症のことで、ここ1週間くらいたくさん質問などがありました。
そのため、現在衛生講話で新型コロナウイルス感染症を取り上げています。
簡単にまとめたものを今回記事にしました。
2020年1月30日時点で判明している記事です。
今後状況が変わってくる場合があります。
最新の情報をご確認ください。
目次
そもそもコロナウイルスとは?
「コロナウイルスなんて聞いたことがない!」という方も多いですが、実はみんなかかったことがあるウイルスです。
コロナウイルスは、ヒトや動物の間で感染症を引き起こす病原体で、これまで6種類が確認されています。
4種類は、咳や咽頭痛などの上気道症状しか引き起こさないウイルスです。
「風邪」のうちの10-15%がコロナウイルスが原因だったりします。
2種類が深刻な呼吸器疾患を引き起こすことがあるウイルスで、重症急性呼吸器症候群(SARS), 中東呼吸器症候群(MERS)として世界的に流行しました。
このあたりは国立感染症研究所にも詳しく記載されています。
新型コロナウイルス感染症は今までみつかっていた6種類以外、つまり7種類目のコロナウイルスとなります。
重症化するコロナウイルス、SARSとMERS
新型コロナウイルス感染症と同じように、風邪では済まない重症化するコロナウイルスを振り返ってみます。
重症急性呼吸器症候群(SARS)
重症急性呼吸器症候群(SARS)は、コウモリからヒトへと感染して、2002年11月から2003年7月の間に8,069人の感染/感染疑いが報告され、うち775人が死亡しています。
死亡率は9.6%とされています。
中東呼吸器症候群(MERS)
中東呼吸器症候群(MERS)はヒトコブラクダからヒトへと感染して、これまでに2,494人の感染が報告され、うち858人が死亡しています。
死亡率は34.4%と多いです。
ただ、その後の調査でサウジアラビア人の0.15%がMERSに対する抗体を有していることが明らかになっているので、無症状/軽症の方がもっといて死亡率が低いかもしれないというデータもあります。
ここまでだとSARSもMERSも恐ろしい感染症ですが、SARSやMERSも共通していて、若年者の死亡率が低いことがわかっています。
SARSでは死亡率は9.6%とされていますが、15歳未満は0%, 24歳未満は1%と少ないです。
一方、50歳以上だと死亡率は65%に跳ね上がります。
新型コロナウイルス感染症も似たような傾向だと言われています。(まだ不明な点は多いですが…)
ちなみに他の感染症の死亡率ってどれくらい?
報告にもよりますが、
- エボラ出血熱 50-89%
- 新型コロナウイルス感染症 2-3%くらい
- インフルエンザ 0.001%(70歳以上は0.03%)
とされています。
インフルエンザと比較すると死亡率が高いことがわかります。
もちろん感染力(1人の感染者がどれくらい他の人に感染させるか)が高いと大変です。
現時点では中国では2-3人となっていますが、日本ではどの程度かはまだ不明です。
感染力はウイルスだけの力ではなく、社会性にもよります。
当たり前ですが、同じウイルスでも密閉した空間にたくさんの人が密集していれば多くの人が感染してしまうし、同じ空間に人がいなければ感染しません。
新型コロナウイルスとは
7番目のコロナウイルスは2020年1月30日時点では、感染者数 8,236人、死亡者数 171人となっています。
感染者数や死亡者数はこちらのサイトから引用しました。
英語ですが、日々どの程度感染しているかわかるので、参考になります。
新型コロナウイルス感染症の治療法は?
残念ながらないです。
症状応じて治療を行う、いわゆる対症療法となります。
そのため予防が大切となります。
新型コロナウイルス感染症にかからないための予防法は?
手洗いとアルコール消毒がとても有効です。
手洗いきちんとできていますか?
この機会に改めて確認してみてください。
また人混みを避けるなども大切です。
コロナウイルスがもともと風邪のウイルスですので、インフルエンザ対策と同じで良いかと思います。
感染を疑った場合の行動
新型コロナウイルス感染症を疑う基準
厚生労働省が発表している基準です。
- 発熱(37.5 度以上)かつ呼吸器症状を有している。
- 発症から 2 週間以内に、以下の(ア)、(イ)の曝露歴のいずれかを満たす。
(ア) 武漢市への渡航歴がある。
(イ) 「武漢市への渡航歴があり、発熱かつ呼吸器症状を有する人」との接触歴がある。
現在は武漢の滞在歴や接触歴となっていますが、今後中国全土などと変わる可能性があります。
新型コロナウイルス感染症を疑う基準に入っている!どうすれば?
医療機関(病院)へ直接向かわないようにしてください。
検査・入院管理の病院が限られているためです。
厚生労働省の相談窓口か保健所に連絡をしましょう。
厚生労働省のコールセンターはこちら。
厚生労働省の電話相談窓口 電話番号 03-3595-2285
受付時間 9時00分~21時00分
有名な医学論文Lancetに載った新型コロナウイルス感染症の情報
2020年1月2日までに感染が確認されて入院していた41人
- 73%が男性
- 32%が何らかの持病がある(糖尿病20%, 高血圧15%, 心血管疾患など 15%)
- 年齢の中央値は49.0歳
- 66%に市場との何らかの接触があった
- 41人全員に肺炎あり
- 合併症として急性呼吸促迫症候群(ARDS) 29%, ウイルス血症 15%, 急性心障害 12%, 二次感染 10%などが見られた
- 32%が集中治療室に入り、15%が死亡した
Lancet. 2020 Jan 24. pii: S0140-6736(20)30183-5. doi: 10.1016/S0140-6736(20)30183-5.
この文献は入院した患者さんのみに限定した解析で、解釈を間違わないようにする必要があります。
死亡率15%もこの患者層での検討の結果なので、全患者数の死亡率とは違います。
重症化する場合にたどる時系列
こちらもLancetのサイトに載っています。
一般的な風邪と違い1週間程度かけて悪化、入院しています。(通常の肺炎もそうですが…)
国内で流行した場合は3-5日程度で治らない場合は疑っていくかもしれないですね。
まとめ
現時点では死亡率3%程度とされていますが、まだ不明な部分も多いです。
治療法は確立されていないため、予防に力を入れましょう!(手洗い・アルコール消毒)
感染を疑った場合には、厚生労働省のコールセンター、もしくは 最寄りの保健所の指示を仰ぎましょう!(勝手に病院に向かわない!)
職場での対応としては、国内流行が起きるようであれば、風邪症状は自宅待機などになっていくのかもしれません。
そして3-5日経っても症状が続く・悪化する場合は医療機関を受診する流れになるのかもしれません。